レポート#073 ディー・エヌ・エー(DeNA)南場さんの採用 『経営者の背中』 |
2011.06.10 Friday
5月25日、携帯電話向け交流サイト(SNS)「mobage(モバゲー)」で、急成長を遂げているディー・エヌ・エー(DeNA)創業社長の南場智子さんが、突然の退任を発表しました。
退任の理由は、病気療養中の夫の看病に時間を割くため、ということでしたが、このニュースは様々なメディアで取り上げられたので、ご存知の方も多いかと思います。
私はそれまで、南場さんの姿をテレビで何度か見た事があり、失礼ですが「よくしゃべる面白いおばちゃん」という印象しかありませんでした。
しかし、この退任騒動をきっかけに彼女のこれまでの記事を見ていると、短期間で日本を代表するネット企業を造り上げた優れた経営者の顔がありました。
彼女がコンサルタントを辞めて起業を決意した頃、採用に関する興味深い話がありました。(下記、日経ウーマンオンライン記事より)
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コンサルタントからベンチャー社長になって生活がどう変わったか。まず、いつなんどき、どんな場面で遭遇する人も、すべて「人材」に見えるようになった。例えば羽田空港でやたら気が利いて感じのよい美人グランドスタッフを見た時は、極度に興奮した。この人いいじゃない。すかさず「今幸せですか?仕事、満足していますか?」と聞いて、答えも確認せずに名刺をおいた。「関心あったら電話して!」なぜだろう、電話はかかってこなかった。男も、男性である前に「人材」になってしまった。フェロモンは減った気がする。
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彼女らしい、とてもユニークで軽いタッチで書かれていますが、人材を獲得する事に対する貪欲な姿勢が読み取れます。
「採用活動にオンオフをつくらない。採用においてはいい意味で公私混同する」
優秀な人材は採用を行っているときに現れるとは限りません。優秀な人材との出会いについて、常に敏感になっておく事が、経営者や人材採用に関わる方には必要なスタンスなのかもしれません。
早稲田大学の講義をした際、学生から質問を受けました。
「トップを張るというのはどういうことなのか、心得を聞かせてください」。
そんな学生からの質問に、南場さんはこう答えたそうです。
「いい質問だね。私よく言うんだけどさ、例えば目の前に濁流があって、川の向こうに肥沃な土地がありますと。そこへ行くべきとか、渡り方はこうするべきとか助言するのが参謀やコンサルタント。一番最初に濁流に足を突っ込むのがトップ。そうするとね、水だと思ったら熱湯だったとか、下に剣山があったりとか、何でこんなことが起きるんだということが起きるんだよね」
「その時に、どういう背中を見せるかということなんだけど、ホントは社長であっても迷いやおびえでいっぱいなんだよね。だって同じ人間じゃないですか。社長も普通の人。でも、それを出さないで、びくともしないふりをしながら渡りきる。あたかも何事もないかのように、大丈夫だよっていう背中をいかに作れるか。ってことなんだと、私は思いますね」
女性らしいしなやかさを持ちながら、男性にも負けない度胸を備え、そして決して自分を飾らない。
そんな南場さんの姿に、あこがれ、共感し、優秀な社員たちが集まってきたのだろうなと思います。
経営者の背中も、採用における広告塔になっているのでしょう。(K)