レポート#095 37シグナルズの採用『場所に縛られない採用』 |
- レポート#095 37シグナルズの採用『場所に縛られない採用』 (05/08)
- コラム #093 この地震は我々の「働き方」を変える (03/24)
- コラム #085 小さな工夫 手書きのチカラ (02/24)
- コラム #083 仕事スタイルは「文章」にあらわれる (02/15)
- レポート#034 37シグナルズの採用 『限界で人を雇う』 (04/21)
コラム #093 この地震は我々の「働き方」を変える |
「今日の計画停電はやるのかな?」
「えっと、うちは第5グループだから…、やば、今日18時20分からだ!」
こんなやりとりを最近よく耳にします。
今、関東近郊に住んでいる人たち、この「停電」にとても敏感です。
この大きな震災を経験して、日常当たり前だと思っていた事のありがたさを痛感する毎日ですが
特にこの「停電」に関しては、今後の経済復興を左右する大きな問題となっています。
電力の回復には、少なくとも半年や1年はかかるだろうと言われており、我々は限りある電力を上手に利用しながら経済活動を行っていかねばなりません。
この電力不足を解消する手段として、4月からのサマータイム制の導入が検討などが検討されていますが、とにかくこの1年近くは電力の不安を抱えながら仕事をすることになるでしょう。
時には停電で仕事が数時間ストップすることや、突然の帰宅命令などもありうります。
また、こうした状況の中で様々な経済活動がストップしているため、景気よく人員を補充して経営できる会社は少ないでしょう。
短絡的かもしれませんが、限られた人員・限られた時間で、高い生産性を上げていくことがこれからの企業の立ち向かわないといけない大きなテーマになると感じています。
かつてのユンケルのCMのように24時間戦えるある意味悠長な時間はないのです。
こうした状況を予見して、当ブログにおいても「ユニークな採用」に加えて、「ユニークな働き方」を研究テーマに加え、様々な企業・個人の働き方の事例を取り上げていきたいと思います。
かつて、レポート#34で取り上げたアメリカの「37シグナルズ」は少人数で高い生産性を上げている代表的な会社です。
しかも社員はアメリカとヨーロッパの2大陸8都市に散らばって仕事をしており、週休3日制。
それでいて、世界中に数百万人のクライアントをもってるなんて驚きです。
高いIT技術でプロジェクトマネジメントツールやTODO管理ツールなどを開発・販売しているだけあり
自身がその体現者であるのですが、、根底には仕事の進め方に対する徹底できなこだわりがあります。
レポート#34でも紹介していますが、そのひとつに、もし仕事が増え負荷が増えた場合は、「本当にその仕事は必要なのか?」「他のやり方でできないのか?」と徹底的に問いかけられます。
その時ふと立ち止まって考えると、無駄が見えたり、不要な作業が発見されたりするようです。
そして極力人は雇わないことをポリシーとしています。
創業者のジェイソン フリードが書いた著書「小さなチーム、大きな仕事―37シグナルズ成功の法則」には、そうした小さなチームで仕事を進める上での哲学が書かれています。
ベンチャー・中小企業の経営者、人事担当は一読の価値のある書籍です。
また、下着メーカー国内シェア2位のトリンプさんは働き方に関するユニークな制度があります。
毎日2時間(12時30分〜14時30分)は自分だけの仕事に集中するため、コピー・電話・立ち歩きは禁止。
部下への指示や上司への確認も禁止されています。
この時間は「がんばるタイム」と呼ばれあの有名な「天使のブラ」もこの時間に生まれたそうです。
合わせてトリンプさんは一切残業しないことでも有名ですよね。
両社に共通しているのは、働き方に対する深い哲学があること、そしてそれを徹底していることです。
日本企業の多くはこれまで画一的な働き方を推奨してきたのではないでしょうか?
そこに哲学はあったでしょうか?
そこに工夫や改善は加えられていたでしょうか?
この大変な時代をきっかけとして、「働く」事に対する新たな視点を取り入れ見直す機会にしてみてはいかがでしょうか?(K)
コラム #085 小さな工夫 手書きのチカラ |
先日のコラム#083にて、37シグナルズやスターブランド社における「文章から現れる仕事スタイル」についてお伝えしましたが、今回は一人からできる小さな工夫として、採用における「手書き」のチカラについてご紹介したいと思います。
現在、採用活動にも多くの会社がインターネットを活用しています。
特に新卒採用においては、数多くの学生を選考する一つの手段として「WEBエントリーシート※」を導入している企業が増えました。
※すべてWEB上で記入できるエントリーシートの事。
最近は写真まで、パソコン上でアップロードして貼り付けられるようになっており、学生にっては、写真代や郵送代などのコストの負担なくエントリーすることができます。
また、企業側にとっても、紙でのエントリーシートよりも、管理が簡単で、誰が提出してい誰が提出していないか、すぐに判明することできます。
しかし、そんな中あえて「手書きのエントリーシート」や「履歴書」にこだわる企業もあります。
手書きの書類には、様々なことが見えてきます。
「どこまで丁寧に書いてくれているのか?手書きならではの工夫があるのか?字の大きさや濃さ」
デジタルでは見ることのできない要素が浮かび上がってくるのです。
私も仕事柄、年間数千枚もの手書きのエントリーシートに目を通す機会があるのですが、本当にみなさん千差万別です。
並べると一目瞭然ですが、手書きのエントリーシートからは「はっきりと意欲」が浮かび上がってきます。
あまりハードルを上げすぎると応募がなくなってしまう。なんて声も聞かれるかもしれません。
しかし、どの時点で手書きを求める選考をするかにもよりますが、そのぐらいで選考を諦めてしまう方を採用する方がよっぽどリスクがあるでしょう。
そして、「手書き」は実は採用する企業側もこだわってほしいのです。
通常の合否連絡は電話かメールが主流です。
もしくは郵送でお送りする場合でも、ワードなどでうち込んだ文面がほとんどです。
しかし、ある京都の呉服屋さんの採用では、選考の合格連絡はすべて手書きのはがきでした。
入社1年目のリクルーターさんが、選考中にフォローした学生が合格された際に合格のお手紙を書いていました。
1人のリクルーターが書く量は毎年100枚を超すそうです。
内容も、月並みな「合格おめでとう」ではなく、「選考でよかったところ、次回気をつけてほしいところ、期待しているところ」などを書いています。
そうした成果もあり、選考の辞退率が圧倒的に少なくなったそうです。
また、フィードバックの効果で、選考中に自信のなさそうだった学生が、どんどん自信ももって次の選考に臨むのだそうです。
手書きのはがきが、応募者を輝かせていくのです。
もちろん手間がかかり、応募者の多い企業ではできないでしょう。
こんな時こそ、小さな会社が力を発揮するチャンスです。
また、手書き合格通知の効果は、手元に残りやすいことです。
前述の京都の呉服屋さんの内定者たちは、手書きの合格通知を大事にもっていました。
自分を温かい目で見てくれて、励まし評価してくれた証です。
入社後、仕事で壁にぶつかった時、辞めたいと思った時、その手紙は初心を思い出してくれる
ひとつの支えとなっているようです。
手書きを重視する採用。ぜひ、一度試してみてください。(K)
コラム #083 仕事スタイルは「文章」にあらわれる |
レポート#34で取り上げましたが、採用選考の際にみるポイントのひとつが文章力です。
本当にほしい人材は、応募する会社、製品、顧客、仕事自体に興味を持っている特別な人のはずです。その人にめぐりあうための第一歩は履歴書に添付されている送付状をみると、職歴にはない、実際のその人となりがあらわれます。
文章の初めに違和感を感じれば、続きの文章から印象が大きく変わることがないので、最初の3行でしっくりこなかれば、残念ながら縁がないと考えています。
その根底にあるのは、「文章がはっきりしているということは、考え方がはっきりしていることを示す」と考えていることです。
さらによい文章を書くことは、ものごとを他人に理解しやすいようにする=他人の立場にたって考える人だと捉えています。
次にスターブランド社の採用選考。実際に面接でポイントになる質問をいくつかするのですが、それに完全に答えられなかったとしても、その採用面接から、何を感じとって、事後に何を考え、どう行動したか、「伸びしろ」が感じられる人には再度選考を続ける場合があります。
その際、実務を推し量るような質問をメールで投げかけます。あるケースを想定した質問をして、それにどう回答するかをみます。
ここでは仕事の段取り、スピード、自分で調べている内容かどうか、仕事を進めるプロセスが村尾さんと近いかなど、メールでの対応、まとめあげた内容からその人の仕事観をみていきます。
文章から、どんな人物で、仕事に取り組む姿勢が自社に向いているか、普段の仕事の進め方などがあらわれてきます。
そんな視点で採用試験行うと、文章だけでも応募者のリアルな姿がみえてきますね。(T)
レポート#034 37シグナルズの採用 『限界で人を雇う』 |
プロジェクト管理ツール「ベースキャンプ」や、Todoリストの共有ソフト「バックパック」など
主にSOHO向けのビジネスソフトをを手がけ、世界に数百万人のクライアントを抱える
ソフトウェア開発会社「37シグナルズ」。
37シグナルズのすごいところは多くのクライアントを持っていながら、
実はたった十数名の小さな会社なのである。
しかもメンバーは、2大陸(アメリカとヨーロッパ)8都市に散らばって仕事をしており
会社は週休三日制で長時間労働・会議・宣伝広告などを否定した経営をしている。
彼らの注目すべきは、技術力の高さもさることながら、
会社・仕事に対する彼らなりのするどい哲学があることだ。
そして、彼らが最も重要だとしている哲学のひとつに、「会社を大きくしないこと」がある。
資本主義経済が発展する中で、「大きくなるのはいいことだ」と
多くの企業は毎年売上げ目標を上げ、社員を増やし、
できるだけ多くの拠点でビジネスを拡大することを望んでいる。
そうした規模を追求する企業に対して、37シグナルズは一蹴している。
『もっと自分の会社の最適な規模を見つけるべきだ。
身の丈にあわない急成長はしないほうがいい。
体の大きくなった企業の無駄の多さ、動きの遅さは、
さまざまなストレスになっている』と。
よって、37シグナルズの採用のポリシーは、「できるだけ雇わない、まず自分でやる」である。
もし仕事が増え、負荷が増えた場合は、「本当にその仕事は必要なのか?」
「他のやり方でできないのか?」と徹底的に問いかける。
では、どうしても人を雇わないといけなくなった場合は、どんな採用試験を行なっているのか?
これも視点がとてもユニークなのだ。
まず、履歴書、職務経歴、学歴は重視しない。大切なのは本当に仕事ができるかである。
よって、実際に入社前に小さなプロジェクトに一緒に入ってもらう。
そこで出てくる質問や判断力、人柄を見ている。
また、文章力の有無を大きな選考基準のひとつにしていることも面白い点である。
「文章がしっかりしているということは、考えがしっかりしているということである
コミュニケーションのコツをわかっていて、他人の立場に立って考えられる人だ」。
デジタルを扱う会社の選考は、非常にアナログであったことに驚く。