レポート#26 パタゴニアの採用 『社員をサーフィンに行かせよう』 |
「社員をサーフィンに行かせよう」
これは世界的なアウトドア・ブランド『patagonia』の創業者イヴォン・シュイナードの言葉である。
しかも、週末にサーフィンに連れて行くという話ではない。
今いい波が来ているなら、今サーフィンにいけばいい。というのだ。
そうした環境を整えることが経営者の仕事であると考えている。
このように表現すると、「そんな綺麗ごとで経営なんか成り立たないよ。」と言うだろう。
特にワーカホリックな日本人からすると、仕事をほったらかして遊びに行くなんて社会人失格だ!
と考える人も多いに違いない。
しかし、実際パタゴニアは創業して30数年間、安定的な成長を続けている企業であり
何より世界中に根強いファンが多くいるブランドである。
そんなパタゴニアという会社は知れば知るほど面白く、興味深い。
パタゴニアのミッション・ステートメントはこうである。
-最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える。
そして、ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する。-
ビジネスは手段であると明確に宣言しているのである。
そして毎年売上げの1%以上は、環境保護活動を行なう団体に寄付され
また、自らも商品に使う商材も農薬などを使用していないオーガニック・コットンを
のみを使用し、そうした生産方法をとっている農家を保護している。
では、肝心の商品はどうなのか?
実はここにパタゴニアの採用基準との関連があるのだ。
パタゴニアは創業以来、基本的にビジネスのプロというスタッフを多く採用していない。
むしろビジネスに没頭するのではなく、アウトドアスポーツに没頭する
アスリートなどを中心に採用しているのだ。
彼らの一部は「アンバサダー」と呼ばれ、ロッククライミングやサーフィンや
スキーのアスリートであり、「パタゴニアの代弁者」として
パタゴニア製品を身につけ、そして製品に対してのアドバイスをするのである。
製品を作るスタッフ、販売するスタッフも、こうしたスポーツを敬愛するものが多く
日本のWEBサイトの採用基準にも以下のように明記されいる。
・現在、アウトドアスポーツに熱心に取り組んでいる方
例えば、クライミング、スキー、スノーボード、トレイルランニング、登山、
フライフィッシング、カヤック、サーフィンなど
・環境問題に関心の高い方
ちょっと他では考えられない採用基準である。
ただ、そういった集団のつくる商品やサービスはどうなるのか?
それはユーザー目線といった生ぬるいものではなく、世界でもよりすぐりの「好き者」たちが
自分たち目線でとことんこだわって作った商品として他社と一線を画すのである。
パタゴニアは、優れたデザイン性や機能性に優れているだけではなく
その裏側にあるスピリッツも含めてブランドになっている。
それに共感して製品を購入するファンも多いという。
「幸せな会社ってどんな会社?」
と聞かれたら
「社員をサーフィンに連れて行ってくれる会社」と答えたい。
そして、これからそんな会社が増えることを期待したい。
そんな風に思える素敵な会社である。