レポート#25 SAS Institute の採用 『こだわり』 |
SAS社は、非上場のソフトウェア企業として世界最大の会社で、統計分析ソフトや
データベース管理ソフトが有名で、その世界で知らない人がいないほど知名度が高
い。現在、全世界で約45,000サイトで採用されている。本社はアメリカのノースカロ
ライナ州キャリーで、社員数は全世界で約1万名、日本法人では210名の規模だ。
2010年1月21日のプレスリリースで、2009年度の全世界の売上高が23億1000
万米ドル(対前年比2.2%増)を記録したことを発表した。なんと世界的な経済不況に
も関わらず、創業以来、34年連続増収を達成している。
実は、同日発表されたプレスリリースにさらに興味を持った。それは、米フォーチュン
誌が毎年発表する「最も働きがいのある会社ベスト100」において第一位に選出され
たのだ。驚くことに、この企画がスタートした1998年から、SASは13年連続ランクイ
ンしており、その内トップ10入りが7回目で、トップ5入りを5回果たしている。→コチラ
毎年ランクインしていると、「評価されるだけのことを続けている継続力のある会社だ、
元気な活力のある会社だ」と見られる。これは「高い資質を持つ人材が多数応募して
くる」可能性が高くなるので、人材採用を行う上で、大きなポイントだ。
またフォーチュン誌でというメディアに取り上げられるということは、同業界からも注目
されることになるし、クライアントさんへの印象も良くなるだろう。さらにスタッフだけで
なく、家族もそこで働いていることを喜んでくれる、そんないいサイクルができてくると
思う。
毎年ランクインしている理由は、福利厚生面の充実も見逃せないが、実は「仕事の達
成感」「仕事の充実度」を優秀な人材の動機づけにしていることだ。
たとえば、従業員に魅力的なソフトウェアを開発するチャンスを提供している。同社は、
毎年売上総額の25%を研究開発費に回しており、優秀な技術者にとっては、最先端
の技術に取り組むことができる。こういった仕事をするワクワク感をつくる施策が、たく
さんある。そこが魅力のひとつなんだろう。
そんな人気企業のSAS社は、実際にどのような採用を行っているのだろうか。そこに
フォーカスしてみたい。
SASの人事担当役員が採用についてこう語っている。
「我が社は今でも“古風な採用方式”をとっている。経営陣は顧客とも従業員とも“長期
的な関係を築きたいと思っているのだ。まるで結婚相手を決めるように、採用に時間を
かける経営幹部が多いのだ。」
「SASは、人を押しのけ、かき分けて、のし上がり、功績を独り占めするような人には興
味がない。そんな従業員は我が社にはふさわしくないのだ。」協調して仲間としてやって
いけるか、どうかが採用におけるひとつのキーワードだ。
ただ面接に時間をかけるだけでなく、幹部レベルの人材を採用するときには、その過程
で応募者の知人や同僚、上司、顧客からも、その人となりを聞くこともあるそうだ。応募
者が我が社にふさわしいか、誰とも協調できるかを確認する。
また同社では学生を採用することもある。インターンで働く学生をパート待遇で雇用し、
その間に仕事に対する倫理観、企業文化への「適性」を知り、さらに技術的能力をはか
る。そして卒業と同時に採用することもあるのだ。
こうしてじっくりと見ることで、企業のことをよく知ってもらい、適性があるか、本当に変化
への対応力があるかなど確認していく。ミスマッチが少なく、離職率が全米同業の中で
極めて低いそうだ。
時間をじっくりかけて、双方納得いくまで面接が続く。
人材の採用に徹底的にこだわる。そのためには魅力ある環境作りが必要だ。地道な努
力の積み重ね、その継続力こそが多くの応募者を引き付けるのだ。
「良い職場環境づくりへのこだわり」、「時間をかけてじっくり向き合う面接へのこだわり」
調べれば、調べるほど、「採用ブランド力を創る」ことへのこだわりが隠されている企業だ。