--世界のユニークな採用試験を紹介する「面接の研究所」--

株式会社コヨーテのオフィシャルブログへようこそ。当研究所では、世界中の気になる企業の採用現場を調べて、そのユニークな採用試験を紹介しています。取り上げる企業は、誰もが知っている世界的な有名企業もあれば、名前も知らない小さな企業もあります。しかし、ここで取り上げるどんな企業も「仲間を募ることへの強いこだわり、熱い想い」は共通していました。そしてその想いは、求職者までもファンにしてしまうものばかりです。ユニークな採用試験の背景にひそむストーリーを楽しんでください。

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コラム #111 「常に卵の側に」村上春樹さんスピーチより
先日、私の大好きな作家である村上春樹さんが、スペインのカタルーニャ国際賞授賞式で、受賞スピーチをされました。日本国内においての講演やスピーチなどは一切うけない村上さんですが、海外での講演やスピーチは積極的に行っています。知りすぎた日本語でのスピーチは難しすぎるという理由のようです。

よって、今回のスピーチも全文英語で行われ、それを翻訳するかたちで日本のメディアには紹介されていました。

今回のスピーチのタイトルは「非現実的な夢想家として」とされ、先日起こった東日本大震災を題材に、原子力の在り方について意見を述べました。このスピーチは、原子力発電に対して、きっぱりとNOと主張し、それを村上さんの書く小説のような語り口とわかりやすい隠喩を用いて語られ、多くのブログで紹介されました。

全文はこちら


村上春樹さんの主張は常に一貫しています。これを読むと2009年に受賞したエルサレム賞のスピーチを想起します。このスピーチも非常に話題になり、日本語訳が多数ありますが、私が大好きな内容で、とても重要なメッセージだと思っていますので、少し長いですがご紹介したいと思います。

全文はこちら




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(前略)

結構な数の人々がエルサレム賞受賞のためにここに来るのを止めるようアドバイスをくれました。もし行くなら、著作の不買運動を起こすと警告する人までいました。

もちろんこれには理由があります。ガザを怒りでみたした激しい戦いです。国連によると1000人以上の方たちが封鎖されたガザで命を落としました。その多くは非武装の市民であり子供でありお年寄りであります。受賞の報せから何回自問した事でしょうか。

こんな時にイスラエルを訪問し、文学賞を受け取る事が適切なのかと、紛争当事者の一方につく印象を与えるのではないかと、圧倒的な軍事力を解き放つ事を選んだ国の政策を是認する事になるのではと。

もちろんそんな印象は与えたくありません。

私はどんな戦争にも賛成しませんし、どんな国も支援しません。もちろん自分の本がボイコットされるのも見たくはないですが。でも慎重に考えて、とうとう来る事にしました。あまりにも多くの人々から行かないようアドバイスされたのが理由のひとつです。

たぶん他の小説家多数と同じように、私は言われたのときっちり反対の事をやる癖があります。「そこに行くな」「それをするな」などと誰かに言われたら、ましてや警告されたなら、「そこに行って」「それをする」のが私の癖です。そういうのが小説家としての根っこにあるのかもしれません。

小説家は特殊な種族です。その目で見てない物、その手で触れていない物を純粋に信じる事ができないのです。そういうわけでここにいます。

ここに近寄らないよりは、来る事にしました。

自分で見ないよりは見る事にしました。

何も言わないよりは何か話す事にしました。

政治的メッセージを届けるためにここにいるわけではありません。正しい事、誤っている事の判断はもちろん、小説家の一番大切な任務のひとつです。

しかしながら、こうした判断をどのように他の人に届けるかを決めるのはそれぞれの書き手にまかされています。

私自身は、超現実的なものになりがちですが、物語の形に移し替えるのを好みます。今日みなさんに直接的な政治メッセージをお届けするつもりがないのはこうした事情があるからです。

にもかかわらず、非常に個人的なメッセージをお届けするのをお許し下さい。これは私が創作にかかる時にいつも胸に留めている事です。メモ書きして壁に貼るようなことはしたことがありません。どちらかといえば、それは私の心の壁にくっきりと刻み込まれているのです。


「高く堅固な壁と卵があって、卵は壁にぶつかり割れる。そんな時に私は常に卵の側に立つ」


ええ、どんなに壁が正しくてどんなに卵がまちがっていても、私は卵の側に立ちます。

何が正しく、何がまちがっているのかを決める必要がある人もいるのでしょうが、決めるのは時間か歴史ではないでしょうか。

いかなる理由にせよ、壁の側に立って作品を書く小説家がいたとしたら、そんな仕事に何の価値があるのでしょう?この暗喩の意味とは?ある場合には、まったく単純で明快すぎます。爆撃機(bomber)と戦車とロケット弾と白リン弾は高い壁です。卵とは、押しつぶされ焼かれ撃たれる非武装の市民です。これが暗喩の意味するところのひとつです。

しかしながら、常にそうではありません。より深い意味をもたらします。こう考えて下さい。私たちはそれぞれ、多かれ少なかれ、卵です。私たちそれぞれが壊れやすい殻に包まれた唯一無二のかけがえのない存在(soul)です。私にとってほんとうの事であり、あなたにとってもほんとうの事です。

そして私たちそれぞれが、多少の違いはあれど、高く固い壁に直面しています。壁には名前があります。それはシステム(The System)です。システムはもともと、私たちを護るべきものですが、ときにはそれ自身がいのちを帯びて、私たちを殺したり殺し合うようしむけます。冷たく、効率的に、システマティックに。

私が小説を書く理由はひとつだけです。個人的存在の尊厳をおもてに引き上げ、光をあてる事です。物語の目的とは、私たちの存在がシステムの網に絡みとられ貶められるのを防ぐために、警報を鳴らしながらシステムに向けられた光を保ち続ける事です。

私は完全に信じています。つまり個人それぞれの存在である唯一無二なるものを明らかにし続ける事が小説家の仕事だとかたく信じています。

それは物語を書く事、生と死の物語であったり愛の物語であったり悲しみや恐怖や大笑いをもたらす物語を書く事によってなされます。生と死の物語や愛の物語、人々が声を上げて泣き、恐怖に身震いし、体全体で笑うような物語を書く事によってなされます。だから日々私たち小説家は、徹頭徹尾真剣に、創作をでっちあげ続けるのです。

(中略)

今日みなさんにお知らせしたかった事はただひとつだけです。

私たちは誰もが人間であり、国籍・人種・宗教を超えた個人です。私たちはシステムと呼ばれる堅固な壁の前にいる壊れやすい卵です。どうみても勝算はなさそうです。壁は高く、強く、あまりにも冷たい。

もし勝ち目があるのなら、自分自身と他者の生が唯一無二であり、かけがえのないものであることを信じ、存在をつなぎ合わせる事によって得られた暖かみによってもたらされなければなりません。

ちょっと考えてみて下さい。私たちはそれぞれ、実体ある生きる存在です。システムにはそんなものはありません。システムが私たちを食い物にするのを許してはいけません。システムがひとり歩きするのを許してはいけません。

システムが私たちを作ったのではないです。私たちがシステムを作ったのです。

私が言いたいのは以上です。エルサレム賞をいただき、感謝しています。世界の多くの地域で私の本が読まれた事にも感謝しています。今日みなさんにお話できる機会を頂いて、うれしく思います。

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現在も政局が不安定で、争いの火種となっているエルサレムで、この演説をすることはとても勇気のいることだったと思います。

常に卵の立場にたつ彼にとって、今回のカタルーニャでの原発へのスタンスもうなづけます。

「卵」に焦点を当てる事で、当たり前だと思っている様々な問題の本質が明らかになり、それこそ、小説の役割だと説いています。

私は採用においても、その本質とは何かを追求していきたいと思っています。そんな中、この「壁と卵」の話は非常に参考になります。

新卒採用というシステム(壁)も、我々自身で作ったものでありながら、このシステム自体にコントロールされ、多くの不満がありながらも、そのシステムに従わざるを得なくなっています。

私たちは、村上春樹さんのスピーチになぞらえるのであれば、採用における「卵」は何かを常に考え、その側にいたいと思います。

そして、卵の側にたつことで見えてくる採用の本質を伝えていきたいと思います。(K)


| comments(1) | trackbacks(0) | 21:40 | category: コラム |
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| - | 2018/03/27 2:26 PM |

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