レポート#070 ライフネット生命の採用 「重い課題」 |
2011.04.12 Tuesday
以前ブログでも紹介したライフネット生命さんですが、現在2012年卒採用の真っ最中。昨年度も実施された通称「重い課題」の応募を開始しています。
「重い課題」とは、主にライフネット生命に関連する質問に対して形式自由のフォームで回答するエントリーシートのようなものなのですが、「重い課題」と言うだけあって、他社によくあるような「学生時代にがんばってきた事」や「当社の志望する理由」などではありません。
今年度の課題の一つ目は、選択式で「ライフネット生命の知名度を3年後50%まであげるプロモーションを考えよ」か「学園祭の模擬店の出店計画を立てよ」というものです。また課題の二つ目は「あなたはお客様サービス部かマーケティング部のどちらに向いているか、プレゼンしなさい」というものです。
特に、ライフネット生命の知名度を上げるという課題については、たくさんの参考となる数値データがあるため、すんなりと回答はできそうにありません。
実際昨年度も同様レベルの「重い課題」の提出者は、5161名のエントリーに対し、課題を提出した人は39名、たった0.8%の提出率でした。
多くの企業であれば、5000人近くも集めて、あまりにも内容が厳しすぎて、たった39名しか課題提出を行ってくれなかったと反省し、次年度の課題のハードルを下げるはずです。
しかし、ライフネット生命さんは、今年も同様の高いハードルの課題を与えました。
なぜ、そんな選考を行うのか、リクナビ上にてその回答がありました。内容を一部抜粋して転記いたします。
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このやり方を採用したのには、いくつかの理由があります。
一つ目は、学生と企業双方が真剣にお互いのことを理解するには、数的処理などの筆記試験や簡単な小論文では到底足りないにも関わらず、お互い「不毛」と分かってはいながらも変化できない現在の採用プロセスに疑問を感じているからです。「自分の頭で考える」ことのできる人材を求めるライフネットでは、「考えるプロセスそのものが可視化される」ような課題であることが必要と考えています。
もう一つは人的な制約です。立ち上げまもなく、少人数で事業を行うライフネットでは、採用活動にかけられるリソースは決して多くはありません。一方でどのような制約があろうとも、一つ一つの内容を精査、吟味し、複数のメンバーが検証することを怠ることはできません。実際に提出いただく方が少なくなろうとも、しっかりとした選考を行いたい、という理由から現在のようなプロセスになっています。
実際に提出された課題を振り返ると、非常に完結にA4一枚でまとめられたものもあれば、パワーポイントを利用して40枚にも上るプランを作成していただいた方もいらっしゃいました。
選考基準としては、一言で言うとさきほどあげた「自分の頭で考えた形跡がうかがえるか」となりますが、より細かく噛み砕くと、以下の2点に集約されるかと思います。
1.課題の意図を理解する
選考課題には、選考する人が「見たいと思っているもの」が必ず反映されています。何が求められているのだろう、と類推することで適切な”課題−回答”の関係が成り立ちます
2.内容について批判的に検証する
一度書き上げて満足する人と、そこから適切な修正を加えて進化させる人との違いは厳然と存在します。内容について、それこそ”てにをは”を含めた誤字脱字の修正はもちろん、選考する人の立場にたって理解が難しそうな言葉を平易なものに変えたり、より理解しやすい文章構成にしたり、反論が想定されるものには根拠となるデータやファクトを用意したり、と飽くなき検証により、より精緻な内容となります
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ひとつひとつの質問にも明確なこだわりがあり、考え抜かれているのがわかります。特に新卒採用においては一人一人をじっくり見て選考する時間は多くありません。
その中で、短い時間にその人の能力、やる気、人柄などを見分けるために、何を聞き、どう育てていきたいか、事前にしっかりと練っておく必要がありますね。
学生のエントリー数という呪縛から脱し、あくまでも内容重視の強い信念を持って採用活動しているライフネット生命さんに見習う事が多そうです。