レポート#069 ホッピービバレッジの採用 愛情あふれる採用 |
桜が咲けば、宴が始まる。古来からの伝統的な行事であります。
ただ、今年は大震災後をうけ、都知事の「自粛」号令に従い、ライトアップもない寂しい春となってしまいましたが、桜を見ると「乾杯!」としたくなるのは私だけでしょうか?
お酒と言えば私はもっぱらビールなのですが、大手メーカーが牛耳るアルコール業界で独特の立ち位置で注目を集めている企業があります。
皆さんもご存知「ホッピー」を製造販売するホッピービバレッジです。
「ホッピー」の歴史は古く、1948年「本物のホップを使ったノンアルコールビール」として誕生しました。ビールが高嶺の花であった当時、ビールの代用品として大ヒットしたそうです。また、焼酎をホッピーで割る「ホッピー割り」という斬新な飲み方が誕生したのもこの当時からです。
しかし、ビールも庶民にとって手頃な飲み物になってきたり、カクテルやワイン、ウィスキーなど様々なアルコール飲料が登場する中で、徐々にその陰を潜めていきました。
そうした中、ホッピービバレッジ社の三代目である石渡美奈社長が、自ら広告塔となって、ホッピーを広報していきます。様々な広報戦略が功を奏して、親父臭いホッピーという飲み物が、今や若者にまで浸透するようになったのです。そして、なんと5年間で年商3倍にまで伸ばしたそうです。
ただし、その大きな改革は順調にはいかなかったようです。一時は工場の責任者及びその部下たち全員が、石渡社長に「やり方についていけない」と辞表を突き付けた事もあっただとか。
その度苦悩し、幾多の苦労を乗り越えていく石渡社長の物語は、様々なメディアで取り上げられていて、経営者でなくとも学ぶ事が多いです。
では、どうしてそこまでの成長が実現できたのでしょうか?
石渡社長は、ホッピービバレッジ社のコアテクノロジーは「技術力」と「人財」であると言い切っています。
そして、特に「人財」の採用、特に新卒採用はもっとも重要な仕事だとブログなどで語っています。
石渡社長が新卒採用を始めたのが、2006年からですが、現在55名の社員のうち新卒入社社員がその半分以上で占められていること事を知ると、どれだけ新卒採用に力を入れているのがわかります。
新卒社員は、能力の発揮の担保はないのですが、やる気の引き出し方次第で無限の可能性を発揮できると信じています。
そんなホッピービバレッジ社の採用は、毎年若手社員で採用チームが組まれ、まだ入社していない内定者も精力的に活動に参加します。そしてどれだけ忙しいさなかでも、必ず石渡社長が登場して、直接学生にホッピーの魅力を訴えかけるのです。
また、内定を出した学生には、石渡社長が直接その学生の自宅に出向き、ご両親と挨拶するというエピソードにも驚きます。
ブログや書籍などを通じて感じる石渡社長のすごいところは、社員に対する愛情の深さです。入社する社員たちを、まるで母親の代わりのような存在で温かく、時に厳しく接しています。そして、「ヘッドハンティングされるような人材になる」ように、可能性を信じて懐の広い育成していきます。
石渡社長は、先代に「手は離してもいいが、目は離すな」と言われた事があるようです。
若手社員に大胆に権限委譲してやらせてみて、壁にあたらせ、乗り越えさせる。石渡社長は簡単には手を貸さず、しかし彼らの成長はしっかりと見守っている。これが育成の根底にあるようです。
そんな素敵な会社が作っている商品にも、その愛情が込められていそうですね。