レポート#060 秋山木工の採用 『人生と向き合う採用』 |
家具職人になるために、4年間は寮に住み込み。
携帯電話・親との面会は禁止。
恋愛も禁止。
まともなお休みは、盆と正月のみ。
そして、女性もなんとバリカンで丸坊主。。。
そんな驚くべき社員教育を行っているのは
神奈川県川崎市にある家具メーカー「秋山木工」さんです。
秋山木工の社長である秋山利輝さんは、
「一流の職人になるためには技術でなく人間性が大切」という持論を持っています。
その人間性を徹底的に磨き上げるために、自身もそうして鍛え上げられた「丁稚奉公」という育成方法をとっているのだそうです。
もちろん技術力についても一流であり、ここで丁稚をしている若者たちは、年に一度行われる「技能五輪全国大会」の「家具」部門でここ数年ずっとメダルをとり続けています。
秋山木工は、その技術力の高さと丁稚と言うユニークな育成制度でマスコミから注目され、ここ数年この厳しい門をたたく若者が増え定員の10倍を超える応募が全国からあるようです。
しかし、まだ小さな規模の秋山木工はそれほど多くの受入はできないため応募者の選定にはとても気を使うそうです。
この厳しい丁稚生活から逃げ出さず、一流の職人になれるまで最後まで頑張りぬける人材かどうかを見極めるのです。
その見極めには、とことん時間をかけ少なくとも1回の面接時間は3時間を予定し、話したりない場合は丸一日、もしくは現場での仕事が入っている場合は、そこまで同行させて話を続けることもあるそうです。
時間をかけて秋山社長が採用か否かを見極めるポイントは2つ。
1つは面接中に一切反論しないこと。
これは、入社すること=社長に教えを請うことをであり、自分をPRしたり、売り込むことは必要なく、とにかく一つでも貪欲に学びとろうとする素直な心が大切だからだそうです。
2つ目は、感謝の心を持っているか。
秋山社長の持論に「職人は、人に感動を与える仕事」とあります。人を恨んでいる人に、人に感動を与えることはできない。感謝する気持ちがあって、初めて人に感動を与えることができると信じています。
そうして、とことんまで話をしてようやく採用、となるわけではありません。
なんと次は親を交えて三者面接を行います。
全国どんな場所であろうとも、秋山社長本人がその子の実家まで赴きます。
そこで「私と一緒に子供を育てる覚悟があるのか。子供のことをどれだけ真剣に考えているか」を見極めるのだそうです。
実は入社してほぼ全員が「辞めたい」と思い、親に相談するのだそうです。
そんな時、本当にその子供のことを思って、厳しく突き返せるか、簡単に受け入れずに説得することが出来るか、そんな親の強い気持ちが必要だからです。
丁稚のひたむきさと、親の愛、会社の真剣さ、この三位一体の関係があってはじめて一人前の職人を育てることができると言います。
1人の採用にここまでするのか、と驚いてしまいます。
しかし秋山社長は言います。
「就職させる、人を雇うということは、その人の人生に責任を取るということです。
そのためには、私も覚悟を決めるだけの準備が必要なんです。」
秋山社長は誰かを雇うと決めた夜は、きまって眠れないのだそうです。
「あの子はちゃんと一人前になれるのだろうか」
「もし一人前にできなかったら」
かつては、悪夢にうなされ暴れることもあったそうです。
こんな採用するのも、すべて「一流の職人にしてやりたい」という秋山社長の強い気持ちから。
そんな強い気持ちで採用に臨む会社があったことに感動を覚えました。
スタイルは違いますが、以前レポート#4で取り上げた「ソニー生命」の採用でも応募者と、とことんまで向き合う採用試験を取り上げました。
採用とは、応募者の人生と向き合うこと。
採用はそんな大きな仕事なのだと改めて痛感しました。