レポート#039 くるみの木の採用 『一期一会』 |
奈良に「くるみの木」という雑貨とカフェの店がある。
場所も、必ずしも利便性がいいところではないが、県内だけでなく、
全国各地から、多くの人が集まってくるお店だ。
「くるみの木」は1984年にカフェオープンした。25年以上続いてる。
その間、1994年奈良市に2店舗目となる「くるみの木フィールデイズ店」
を始める(期間限定のため2007年閉店)。さらに2004年、奈良市内に、
「秋篠の森」をオープンした。ここでは、ホテル、レストラン、さらにギャラリー
を併設するなど、今までにない新しいチャレンジをしている。
そのお店のオーナーが石村由起子さん。
30歳を過ぎてから、ゼロからのスタートでカフェをつくったのだ。
今でこそ、カフェや雑貨の店は珍しくないが、当時はそのような形態のお店が
ほとんどなく、知ってもらうのにも時間がかかり、お店の経営もうまくいかない
時期が続いたそうだ。
お客さま、仕入れなどで関わる協力会社さん、働くスタッフを大切にすることを
してきた。さらにお店のご近所の方といい関係を築くことにも注力してきた。
その過程で、一人ひとりファンが増え、いろいろ教えてくれたり、サポートして
くれる機会を多く得た。自分のこだわりや世界観を大切にしながら、周囲の
応援もあり、工夫を繰り返す中で、今のスタイルをつくりあげてきたのだ。
『人とのつながりを大切にしている。』
だから石村さんは、お客さまや友人、お世話になっている方々など、何かしら
ご縁をもった方々に「元気だより」というレターを年に数回送っている。
中身は、お店で行う展示会の案内や、その時々の奈良の行事を記したDMな
のだが、必ず手書きで、ひと言添えるようにしている。
「一期一会の精神」を大切にしているのだ。
信用を得るのは月日の積む重ねが必要だが、失うのは一瞬のことだと。
だからこそ、日ごろのサービスの質(接客、味、お店の雰囲気など)細かくこだわる。
今では、多くのスタッフを抱えるので、お店の大切にするスタンスやルールを細かく
定めて、スタッフに伝えている。
お客さまに、こういうお店だと思われたいというイメージがあるから、そこに近づける
よう、厳しく自分たちを律していく、ぶれない軸を地道につくり続けている。
そんなお店のスタッフは、
元スタッフのお子さんが働いていたり、
もともとお客さまでお店に通っていた人だったり、
一度辞めて戻ってくる人もいる。
そして、長く働いているスタッフが多いそうだ。
スタッフも「ここで働かせてください」と向こうからやってくる感じだ。
いつ来ても、同じあたたかい雰囲気で迎えてくれるお店。
スタッフが自然と集まってくるお店には、見えない努力の積み重ねが隠されているのだ。