レポート#32 ザ・リッツカールトンの採用 『積み重ね』 |
リッツカールトンといえば、世界でも有名なラグジュアリーホテルチェーンであり
誰もが一度は行ってみたいと思う、最高のおもてなしを売りにしている企業である。
そこで働く従業員(紳士淑女と呼んでいる)のサービスの質の高さは
同業だけではなく、サービスを志す企業の憧れの存在である。
今や多くの企業で浸透しつつある『クレド(信条)』を生み出したことや、
お客さまのサービスのためなら1日2000ドルまで従業員の裁量に任せてられていることなどは非常に有名な話である.
そんなサービスの最高峰とも言えるリッツカールトンへの入社を希望する人は多く、採用サイトには1日に3万件以上のアクセスがあるそうだ。
そんなリッツカールトンの採用試験は、面接の回数が多く、こだわりが強い。
あるマネージャーの採用では、人事やオーナー、従業員あわせて14人もの
面接官と会って入社したそうだ。
これだけのメンバーに選ばれたという誇りと期待感を醸成することで
入社後のモチベーションやパフォーマンスが高くなるのだそうだ。
また、面接自体も単に回数をこなしているのではなく
面接を行う資格をもった社員が、QSP(Quality Selection Process)といわれる
科学的な人材選考プロセスを通じて選考しているのである。
選考の基準は、これまでのキャリアやスキルは全く問われることがなく
応募者の価値観、考え、パーソナリティを様々な角度から分析しているのである。
もうひとつ、リッツカールトンの面接でユニークな点がある。
それは、面接を受けに来る応募者の応対に関するエピソードである。
あるマネージャー候補の面接のこと。
面接会場はホテルの宴会場で、入り口には2人のドアマンが立っており、
中にはグランドピアノの生演奏、面接では管理職がウェイターとなり、
コーヒーやジュースを運んでくれたのだそうだ。
つまり、応募者に対しても、お客さまと同じ様なもてなしをするのだ。
これは最初にリッツ・カールトンの理念や価値観を伝えるためであったそうなのだが
応募者の半分くらいは会場の雰囲気を見て、自分には合わないと思い、帰ったということだ。
このように、リッツカールトンの採用は非常に多くの時間と手間を惜しまず
すぐに人が欲しいから急いで採用する、ということは許されない。
即戦力を採用することはせず、素質のある人材に対して
会社の価値観・考え方・行動指針などを十分に時間をかけて植えつけていくことに重点を置いている。
彼らは言う。
『リッツカールトンのサービスは一朝一夕にできるものではないんだよ。
長い時間の積み重ねが、今ここに表れているのだ』と。